もう猶予はない。

福岡ソフトバンクホークス・松坂大輔投手のことだ。
5月24日に予定されていたウエスタン・リーグ、広島戦での登板を直前で回避。
開幕前に右肩の筋疲労を訴えていたベテラン右腕の復帰ロードには再び暗雲が垂れ込めてきている。


本来ならば、このウエスタン・広島戦は二軍戦ながら日本復帰後2度目の公式戦登板となるはずだった。
4日前のウエスタン・オリックス戦で2カ月ぶりに実戦登板。
2回2安打1失点(32球)というピリッとしない内容に終わり、制球は相変わらず悪く直球も最速142キロと往年の切れ味は見られなかった。
周囲を不安がらせていた松坂は中4日のマウンドで名誉挽回を果たす必要性があった。


ところが、松坂はあっさりと回避してしまった。
中継ぎで3イニングを投げる予定だったもののブルペンで肩を作っていた際に調子が上がらなかったことが、その理由という。
「まだこういう状態なので、いい時も悪い時もあるだろうと思っていた。今日は試合前のキャッチボールの時点であまり(調子が)よくなかった。ブルペンで投げた感じもあまりよくないと思ったので、回避することにした」とは松坂のコメントだ。


もう開幕して2カ月以上が経過した。
8年間のメジャーリーグ生活で培った経験と能力を買われ「優勝請負人」としてホークスに移籍してきたはずだが、9年ぶりとなる日本プロ野球の公式戦一軍マウンドにはいまだ立てていない。
辛口のホークスOBの中からは「ホークスは人気と話題だけでかつて『怪物』と呼ばれた男を獲りにいったが、その当人が客寄せパンダとしての仕事もしてもらえないのだから大きな買い物をしてしまった」という声も聞こえてくる。
しかし、それもこういう状況になるとあながち的外れとは言い切れなくなってくる。


二軍戦を登板回避する前の段階だが、ホークスの工藤公康監督は松坂の一軍合流時期について
「(二軍戦で)100球くらい投げたらね。実績も経験もあるから。みんな早く一軍で投げる姿を見たいでしょう?」と語っていた。
とはいえ、こうなると「100球を投げられる日なんて本当に来るのか」と疑いの目を向けたくもなる。
もしそのノルマを二軍でクリアできないまま、首脳陣が松坂を一軍に上げてしまえば結果はほぼ見えているだろう。
残念ながら現状で松坂が一軍のマウンドに立って快投する姿を想像できる人はよほどの楽観主義者か、もしくは超プラス思考の持ち主と言わざるを得ない。


厳しい言葉ばかり並べ立てたが、これが現実なのだ。松坂とホークスは3年契約で年俸は4億円プラス出来高。
「実際にはもっともらっているんじゃないのか」という目を向ける人もいる。
人もうらやむような超大型契約の厚遇でありながら、まだ何も働いていないのだから「給料泥棒」という一言だけで済ますのも生ぬるい。
すでに松坂に対してはネット上でユーザーたちから激しいバッシングが浴びせられており、鷹党の怒りも爆発寸前となっている。


ケガだから仕方がないという意見も少数派ながらあるようだ。
しかし、これは間違っている。
ケガをしないようにコンディション管理を徹底させるのもプロフェッショナルの責務。
ましてや、松坂は工藤監督が言うように「実績も経験もある」選手だ。
期待されているからこそ、これほどまでの莫大な対価を松坂は得ていることを肝に銘じなければいけない。


本当は全ての面において他のチームメートの模範役にならねばならないプレーヤーが、これだけの破格条件を手にしながら何もしないまま「肩の調子が……」などと口にして二軍で“バカンス”を続けているとあっては、がんばっているナインに対しての示しもつかない。
当然ながらチーム内で「なんで、アノ人だけが特別扱いされるんだ?」という不満や士気低下を招く危険性も出てくるだろう。


こうした松坂の近況に海の向こう側でも違和感を覚える関係者は多いようだ。
つい先日、米スポーツ専門局「ESPN」で放映された『Baseball Tonight(ベースボール・トゥナイト)』という人気番組の中で興味深いトピックスが取り上げられていた。
その内容とは「2006年オフにレッドソックスが当時のレートで実に100億円を超える資金を投じて獲得したダイスケ・マツザカは今、日本でどうなっているのか」――。


5分程度の短い放送尺の中、松坂が日本のホークスを新天地として巨額契約を手にしながら今もマウンドに立てない現状について出演したコメンテーターたちがあれやこれやと持論を展開させていた。
その中でも目を引いたのが同局アナリストのカート・シリング氏の言葉である。
同氏はレッドソックスで2007年から現役を退く2008年までの2シーズン、松坂とチームメートであった。

「ダイスケはいろいろ言われているようだが、もう少しだけ待ってみようじゃないか。ただ、もうその時間が残り少ないことだけはハッキリしている。次の“回答”で周囲を納得させることができなければ、もう『結論』を出さなければならないだろう」


他のコメンテーターに比べ、シリング氏の言葉は非常に短くシンプルなものだった。
それでも松坂をかつて弟分としてかわいがっていたこともあっただけに説得力に満ちあふれていた。
実はシリング氏にも2008年のシーズンはレッドソックスと前年オフに1年800万ドル(約9億7370万円)の巨額契約を結んで延長しながら、右肩を痛めて一度も登板できずメディアに叩かれまくった苦い過去がある。
そして、そこに結果を残せなかった責任とプレーヤーとしての限界を感じ、翌年3月に現役引退を表明した。


そういう過去の背景と照らし合わせれば、シリング氏が番組内で松坂に関して口にした「結論」とは「引退」を指しているのは間違いないだろう。 


かつて「怪物」と呼ばれた男の面影は今や微塵(みじん)もない。
果たして、松坂は何もしないまま終わってしまうのか。いや、そうは思いたくない。
可能性は限りなく低いかもしれないが、世のビジネスパーソンたちを再び熱狂させるような力投を見せてくれることを信じたい。

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