原発が日本に存在すること自体については、官民の双方に責任があることから、原発事故の責任に関して東電ばかりを攻めても仕方がない、とは思う。


だが、「原発は安全」を連呼していたのに、事故が起きたら「自分らでは収拾がつけられない」ことが露呈するという無責任な状況について、東電はしっかりと落とし前をつける必要がある。

記事では、「昨年九月に発足した東電の事故賠償を支援する政府組織「原子力損害賠償支援機構」がまとめた「総合特別事業計画」という東電の再建計画が取り上げられている。

この機構を通して、「支援金1兆6000億円の支出と、東電国有化のための株式取得費の1兆円(予定)」の国費が東電に投入されることになっている。
にもかかわらず、「再建計画の舞台裏でうごめいているのは、国民を無視し、『政治家のメンツと経産省のプライド』ばかりが優先された歪んだ思惑」なのだという。

まず、「経産省と東電の間では『早期の原発再稼働』を当然の前提」にしており、「原発事故の賠償を原発で賄う」という話になっていると言うから驚きである。
たしかに、同事業計画を管轄する枝野経産相の発言も、昨年末までは原発に批判的であったが、今年2月になると再稼働を容認する発言をしている。

つづいて、東電のコストカットはどうなっているのだろう。
経営責任を取るとのことで、主な役員は退職し、退職金もなしになる。
しかし、リストラはほとんどしない。
削減される社員は、3万9000人のうちの3000人のみ。
社員年棒が2割カットされても、「公務員並み」の年俸になるだけ。

東電の社員の方々にも生活があるのだとは思う。
>>僕のお父さんは東電の社員です

それでも、被災者と避難者の数は合わせて約150万人で、うち「本賠償の支払いが終わっているのはわずか3万8000件」のみ。
常識的に考えれば、まずは20兆円の賠償総額を自分の力でいかにして支払っていくのかを考え、その上でやむなく国費の支援を受けるような体制を東電は整えるべきではないか。

ようは、同事業計画を主導する経産相が「東電再建において、いかに経産省がイニシアチブを握るか」ばかりを考えているがゆえに、賠償問題やコストカットがなおざりにされた再建計画が進んでしまっている、という話である。
>>ボクが東電前に立ったわけ

事故により未曾有の被害を発生させておきながら、経産省も東電もいまだに自らのエゴを押し通そうとしている。原発事故が起きた後も、魑魅魍魎が徘徊する原発の周辺。

あきれる一方で、しっかりと監視しておかなければとも思う。
このままでは賠償が利権と化す日も遠くないような気がする。