視聴率の落ち込みが注目されている、連続テレビ小説『マッサン』(NHK)。

第8週で週間平均視聴率が『あまちゃん』『ごちそうさん』『花子とアン』と続いていた20%台をはじめて割り(関東地区、ビデオリサーチ調べ)、先週放送の第11週では17.7%と最低視聴率を記録。「朝ドラ快進撃もついに終わりか」と囁かれている。


だが、じつはドラマ本体とは関係のないところでも、『マッサン』は窮地に立たされていた。
それは、大企業・サントリーからの“横やり”だ。


『マッサン』は、ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝と、彼の妻リタをモデルにした物語。
政孝=亀山政春を玉山鉄二が、リタ=エリーをシャーロット・ケイト・フォックスが演じており、さらに政春を支え、後にライバルとなる鴨居商店の主・鴨居欣次郎役として堤真一が出演。
この鴨居欣次郎のモデルというのが鳥井信治郎で、サントリーの創業者なのである。


ドラマでは現在、鴨居のもとで政春がウイスキー蒸留所の試験を行っているが、これが現在もサントリーが操業する山崎蒸留所である。
が、ドラマではいわずもがな、物語の山場は鴨居商店退職後に北海道・余市で大日本果汁(後のニッカウヰスキー)を起こすことにある。
実際、『マッサン』効果でニッカの「竹鶴」「余市」などのウイスキーは大幅に売り上げを伸ばし、「竹鶴」にいたっては9月の時点で前年同月比62%増という驚異の数字を叩きだしている。


当然、このドラマ効果がおもしろくないのはサントリーだ。
サントリーには日本で最初のウイスキーをつくった会社という自負があるだけでなく、鳥居と竹鶴には確執があったともいわれており、ライバル関係を超えた対立がある。
そのためか、サントリーは出版社に対して“ある通達”を行っていたというのだ。


「サントリーからの通達というのは、“『マッサン』のあやかり企画を記事としてやらないように”という内容でした。
『あまちゃん』しかり、『花子とアン』しかり、これまで週刊誌をはじめとする雑誌では高視聴率を獲得する朝ドラに乗っかっていろんな企画を立ててきましたから、それをやめろと言っているわけです。
その通達は宣伝部を通して編集部にも伝えられたのですが、サントリーといえば一大出稿主。
いくらドラマネタをやりたくても、相手が相手だけに、さすがに編集サイドも手を出せません。

他社の編集者からも“例の通達、来た?”と聞かれたほどなので、サントリーはきっとかなり手を回していると思いますよ」(雑誌編集者)


実際、8月には「週刊現代」(講談社)がカラー企画でニッカウヰスキーを取り上げ、しかも前ページにサントリー・角ハイボールの広告を入れてしまったために、講談社はサントリーから猛抗議を受け、講談社への広告出稿を検討するとまで言われたらしい。


本来なら、鴨居欣次郎を演じる堤真一のキャスティングはドラマのなかでも大きな目玉だったはず。
とくに堤真一は関西出身者らしく嫌味のない大阪弁を披露し、ダメ男のマッサンとは対照的なカリスマを自然に演じている。
この見どころがもっとフィーチャーされてもいいはずだが、メディアが報じるのは、視聴率低下の話題ばかり。
たとえば、「週刊文春」(文藝春秋)は「マッサン〈玉山鉄二〉 激やせと視聴率20%割れの相関関係」と題して、結局は視聴率とは関係のない玉山が14キロも体重が落ちてしまった話を取り上げている。
もともと視聴率の戦犯を叩くのはメディアの好物ではあるとはいえ、創業者モノやサクセスストーリー好きの雑誌が堤の役どころにスポットを当てないのは不自然なようにも感じられる。


現状のウイスキーブームは『マッサン』効果もあるだろうが、それはサントリーがハイボールブームをつくった下地があったことも大きい。
国産ウイスキーをさらに盛り上げるためにも、ここはサントリーも大人げなく圧力をかけるのではなく、フェアに戦ってほしい気もするのだが……。