毎年、師走が近付くと蒸し返されるのが、子供の写真を使った年賀状の賛否をめぐる論争だ。

インターネット上では「ほほえましい」と歓迎する人がいる一方、「子供ができない人もいるのに」など配慮不足を批判する声もあり平行線をたどるばかり。
スマートフォンと年賀状アプリの普及で写真入り年賀状の作成がパソコンより楽になり、写真入りが増えるのは確実だけに、論争はますます熱くなりそう。
否定派、肯定派の双方が納得する解決策はあるだろうか。


晩婚で1人目の子供を授かった東京都の会社員、田中恵子さん(40代)=仮名=は2人目不妊で悩んでいたとき、きょうだい仲良く並んだ子供の写真入り年賀状を受け取って落ち込んだという。


「本当にへこみました。不妊治療をして1人目を産んだ女友達に相談していたら、しばらく連絡が絶えた後、年賀状で彼女に2人目ができたと分かったんです。自分も子供の写真入りで送っていたので反省しました」


そうはいっても、今年も七五三のときに撮影した家族写真を使うつもりだ。


「独身のときは『君たちの子供には一切、興味ありません』とバカにしていたのに、結婚、出産したら自分も気合いを入れて写真入りで作りました。
うざいですよね。でも、ついやってしまうんです」


子供の写真入りが是か非かは長年、決着の付かないテーマだ。
とりわけ子供だけの写真を使った年賀状に対しては、不快感を持つ人が一定数いる。


埼玉県の会社員、山田浩史さん(50代)=仮名=もその1人だ。
「一度も会ったことのない子供の写真を見せられるにつけ、一体どういうつもりかと首を傾げてしまう。
家族そろった写真だったら『あいつも老けたなあ』と思えるけど。
自分に子供がいないから、そう思うのかもしれませんね」


東京都の会社員、伊藤裕子さん(30代)=仮名=も年賀状への思いは複雑だ。
独身の伊藤さんには同じく未婚の女友達が多い。
「新年早々、結婚報告を見るのがいやで年賀状を自分から出すのをやめた友人もいます。
海外旅行先で1人で写っている年賀状を送ってくるのは、たいてい独身。
背景が年を追うごとに秘境になっていく傾向があります」とため息まじり。


子供だけの写真には「『あなたの子は知り合いじゃない』と言いたい。
かわいいと思うのは親だけ。悪意がないのと悪くないのは別です。
知っている子なら、大きくなったなあと思って自分の年齢を考えます。
特に問題なのは手書きのメッセージもない写真だけの年賀状。
一言でも添えてあると気に掛けてくれていると思えるけど」と怒りも感じる。


一方、子供だけの写真を使った年賀状を毎年送っている東京都の会社員、鈴木宏之さん(40代)=仮名=は「新年の挨拶と近況報告なのだから、『子供がこれくらい成長しました』と報告して何が悪いのか分からない」と迷いがない。


形式的な付き合いの相手には出さないといい、「子供の写真で怒るようなら、その程度の付き合いということ。幸せ自慢のつもりはない。一家であなたの新年を祝いたいという気持ちなんです」と説明する。


過去の論争をひもとけば、届いた子供の写真を見て成長を喜んでくれる人ばかりではなく、「未婚の私には嫌味」「不妊治療中なのに」と新年早々落ち込む人もいるのは明らか。
鈴木さんもそうした心情を汲むのはやぶさかではないが、「個人的な事情を知っていたら、もちろん配慮はします。でも、事情を知らないのに『察しろ』といわれても無理。
『あなた方の人生まで背負えないよ』という気持ちです」と反論する。


東京都の会社員、上田由紀子さん(40代)=仮名=は一人暮らしの母親が毎年、孫に囲まれた写真を使うという。
「幸せ自慢と言われたらそうですが、駄目と言うと母の人生を否定するようで可哀想」と、撮影に協力している。


写真入り年賀状は以前からあったが、今はより簡単に作れるようになった。
昨シーズンから、スマートフォンで撮影した写真を使って手軽に作成できる年賀状アプリが増えたためだ。


プリンターを使わず、デザインから印刷、投函まで対応したアプリもある。
写真を自動的にレイアウトするテンプレート(ひな型)が豊富にそろうとあって人気を集めおり、写真入りが増えそうだ。


親にとっては、かわいい子供の写真は使いたいもの。ときに不快感を生じさせてしまうのは、避けがたいのだろうか。


生活総合情報サイト、オールアバウトの「暮らしの歳時記」ガイドの三浦康子さんは、「写真入り年賀状が一律に悪いわけではない。相手の気持ちに沿っていればOKです。
思いやりを忘れると、幸せ自慢に見えることもある。
自分のことばかり伝えても、本来の年賀状の趣旨から外れるので気を付けてほしい」と指摘する。


三浦さんによると、そもそも年賀状を送る習慣は無事に年を越し、新年を迎えた喜びを分かち合うための年始のあいさつが起源。
武家社会で年賀に参上することがしきたりとなり、一般社会に広がった。
遠方の人に出していたのが年賀状というわけだ。
だからこそ、新年を祝う言葉や旧年中の感謝の言葉、相手の幸せを願う言葉を書く。


ただ、年賀状は今や絆を確認し、親交を深めるツールとなっている。
ふざけた年賀状でも相手がおもしろがってくれるなら構わないという。
大事なのは相手への思いやりだ。


年賀状の内容にまつわる悩みについて、三浦さんは「みんなに同じものを送るのが楽という合理的な発想が根底にあるからでは。
昔は相手を思い浮かべ、それぞれに合った年賀状を書いた。
合理的と思いやりは別。普段の付き合いと同じです」とする。


とはいえ、全て手書きにするのは手間がかかり、現実には難しい。
そこで三浦さんが勧めるのは、手書きで一言添えたり、相手によって賀詞を変えたりする方法だ。
それだけでも印象がずいぶん違う。
「私用と公用のほかに、その中間くらいの年賀状も用意しておくと便利」と助言する。


せっかく手軽に作れるようになった写真入り年賀状。今シーズンは、いろいろなパターンを作って使い分けるのもいいかもしれない。