アイウェアショップ「JINS」を展開する株式会社ジェイアイエヌは13日、日本未来科学館の「Geo-Cosmos」(ジオ・コスモス)で発表会を開催。


眼電位検出により視線移動や頭部の動きを検出できるメガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」(ジンズ・ミーム)を発表した。発売は2015年春を予定している。

価格については、「JINSが作る商品なので、皆さんの手に届かないということはない」としたが、現時点では未定。

JINS MEMEは、3点式の眼電位センサーを内蔵し、視線の角度やまばたきの速度などを検出できるメガネ型ウェアラブルデバイス。
眼電位センサーについては、本製品の開発に協力した東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授が解説。
眼球の動きによる電圧の変化を電池に例え、目の動きによって電圧が変化することを紹介。

これまで目の動きを読み取る手法として使われた外部のカメラ(イメージセンサー)を用いた方法では、目を閉じたり、人が横を向くなどカメラが目を読み取れない状態になると検出できなくなるほか、バッテリ消費電力が大きくなるという課題がある。
一方、医学の世界では眼電位を用いた手法も使われていたが、電極を4点貼り付けるものが一般的であるという。
しかしながら、4点の電極を貼り付けると拘束が強く、生活の中で使えないことから、JINS MEMEでは3点式の眼電位センサーを開発、搭載しているという。

この3点の電極は、鼻にかけるノーズパッド部と、眉間に相当するブリッジ部に電極を装備。
これらによって電圧の変化を読み取る。
なお、この3点に加え、グラウンドとなる電極をテンプルの先端部に備えており、ここも耳に接触させることになる。
この眼電位センサーにより、8方向への視線の角度、まばたきを検出できる。

さらに、角速度(ジャイロ)センサーや加速度センサーも装備。頭部で体の動きを検知することで、リストバンド型などに比べて体軸や重心などをより高精度に測定できるという。

ハードウェア面では、このほかBluetooth 4.0(Bluetooth Smart)を装備し、iOS/Androidデバイス、Windows、Mac OSなどに接続。
リチウムイオンバッテリをテンプルに内蔵しており、Micro USB経由で充電を行なう。
駆動時間は約8時間。また、アタッチメントパーツにより、最大16時間の駆動が可能になる。

重量はウェリントンタイプで約36g。形状はウェリントンのほか、ハーフリム、サングラスの3種類を発売予定。
デザインはアウディや日産で自動車のデザインなどを手がけたSWdesignの和田智氏が監修した。

株式会社ジェイアイエヌ代表取締役社長の田中仁氏は、2011年9月に発売したブルーライトカットメガネ「JINS PC」が、“目を守る”という付加価値で視力が悪くない人もメガネをかける概念を生み出し、アイウェア業界の景色を一変させたと紹介。


「これまでのメガネは自分の外を見たり、外から自分を守ってきた。
JINS MEMEは内面に目を向け、目から得られる情報で自分を知ることができるデバイス」であるとし、本製品を活用することでオフィスでの仕事効率化や、自動車の運転手を安全にするなど、社会的に貢献できるものとアピールした。

また、東北大学の川島教授は「リアルタイムセンシングはキーワードになっているが、“敢えて付ける装置”ではうまくいかない。
生活の中で必要とするものにセンサーが入っていることが成功のためには必要」であると考え、本製品の有効性を強調。

同じく発表会に登壇した慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科(KMD)の稲見昌彦教授は「PCやスマートフォンでできる作業の一部をハンズフリーにするだけだったことが、ウェアラブルデバイスの普及を阻んできた要因ではないか」と指摘。
1995年に撮影されたMIT(マサチューセッツ工科大学)のウェアラブルウェアデバイス研究チームの写真を紹介し、「今とあまり変わっていない。開発者や研究者が、いかにコンピュータという世界観に縛られてループしていたかが分かる」と、技術に長けた電機メーカーではなく、メガネブランドから従来とは異なるアプローチの製品が生まれたことの意義に触れた。

さらに稲見氏は、人に寄り添って無意識の行動を検出、サポートする「人機一体のデバイス」を今後のイノベーションのキーワードとして挙げ、「人が多くの情報を得る“目”からの情報は、個人の深いところから来るデータ。
“Deep Data”を収集できることで、新しいサービスなども出てくるのでは」と期待を寄せている。

具体的な使い方は、スマートフォンに接続して、専用アプリでさまざまな情報を読み取ることになる。
このアプリ上では、“Mental Energy”に由来する「me」という独自の指標を用いて疲れ具合を表現する。
この数字が大きいほど疲れが少なく、小さいほど大きい。
田中氏のある1日の測定結果では、おおむねプラスで推移する中、来客とヘビーな話をしたシーンでマイナス8meを記録したという。

このmeの指標を用いることで、仕事中の疲労度、コンディションを把握。7,500億円の社会的損失という試算がある、PCのディスプレイを長時間見続ける作業を行なったことで体調が悪化するVDT症候群も取り上げ、「オフィス労働の疲労を適切にマネージメントすることの重要は高まると考えている」とした。

また、運転サポートについても紹介。
眼電位センサーの情報により居眠り運転を検知したらリアルタイムに警告する。
この眼電位センシングによる眠気判定のアルゴリズムは、芝浦工業大学 工学部 電子工学科の加納慎一郎氏が開発したもので、眼球の動きやまばたきの強さや速さから、どのぐらい眠気を感じているかを測定するという。

この眠気検知アルゴリズムを活用して、今後、カーナビなどから運転手へフィードバックするシステムなどの構築にも意欲を示しており、すでに慶應義塾大学メディアデザイン研究科とデンソー、ジェイアイエヌによる産学共同体制で次世代の運転サポート技術に関する研究が進められているという。

また、頭部に加速度、角速度センサーを搭載することの利点については、フィットネスやスポーツ分野への応用を紹介。
歩数計などのほかに、体が前後左右にどうブレているかを表示する機能もスマートフォンアプリに搭載している。

体軸のブレの高精度な検出が行なえることは、スポーツ医学に適用することで「アスリートをより強くする」(田中氏)ことや、高齢者の普段の歩行をモニターすることで足腰の異常や認知症の予兆を捉えることへの応用に意欲を示した。

このほか、あくまでデモレベルの話に留まるが、目を左右に動かすことでスマートフォンのフリック操作を行なうといったユーザーインターフェイスのデモも実施している。

この専用アプリケーションは、Windows、Mac OS、Android、iOS向けに無償提供される予定。

さらに、ソフトウェア開発者がJINS MEMEを用いたアプリを開発、公開し、ビジネスが行なえるようなプラットフォームを構築していく計画であることを紹介。
製品発売に先立つ2014年秋頃より、瞬目/瞬目の時間/視線方向(8方向)/3軸ジャイロ/3軸加速度といったセンサーのデータや、精神疲労度/眠気/歩数と速度/カロリー/姿勢といったアプリケーションのデータを取得できるAPIが公開される予定になっている。