自主規制という名の暴走が始まったのか? 


3月6日にテレビ朝日系列で全国放送された『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』で、しずかちゃんが全裸になるシーンに修正が入るという椿事が起こり、注目を集めている。

この修正が行われたのは、ひみつ道具・ハイパー掃除機でしずかちゃんの服が吸い込まれて全裸になってしまうというシーン。
しずかちゃんの服がパンツごと破れていくカットすべてに、光のラインが入って一部が見えなくされていたのである。
  
近年、アニメがテレビ放映される際に修正が入るということは、しごく当たり前に行われている。
深夜アニメでは、湯煙や光など、さまざまな手段を用いて乳首や股間、下着などを隠している。
それらの修正は、後に発売されるDVDやBlu-rayあるいはCS放送では行われていないか、もしくは消しが薄くなることが多い。

先日、『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』の放送時間帯変更の記事(参照)でも記したが、通常、こうした修正の指示を行うのは広告代理店かテレビ局のどちらかである。

テレビ局は、公共の電波の一部を許可を得て独占的に利用するというのが前提だ。
そのため、各局の放送番組基準と日本民間放送連盟の放送基準に適合しないものは、放送されないということになっている。

日本民間放送連盟の放送基準を見ると、性表現に関する項目には、確かに「全裸は原則として取り扱わない」という記述がある。

とはいえ、従来から『ドラえもん』において、しずかちゃんがお風呂に入るシーンは、定番中の定番だ。
近年は、姿を消しているが、全裸あるいはそれに近いシーンは幾度となく描写されてきたハズである(2月28日に放送された「会いたいヒト回転寿司」の回では、風呂桶に浸かった姿で、入浴中のしずかちゃんが登場している)。

あまつさえ、問題となっている作品『映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館』は、昨年映画館で全国公開されて、子どもたちも見ている作品である。
ゆえに、なんら卑猥なものであったり性的興奮を喚起させるようなものでないのは、明白だろう。

6日の放送以来、ネットでは国民的アニメ『ドラえもん』に“深夜アニメ的な修正”が入った事実を、ネタとして取り上げている事例が多く見られる。
しかし、笑いごとにしている場合ではない。
この修正は、間違いなく過剰な自主規制の結果である。
このシーンを修正した担当者の脳内にあったのは、放送基準を杓子定規に解釈する意思と、それをやっておけばクレームは来ないであろうという希望的な観測である。
つまり、この修正の実態は担当者たちの無責任性を全国に晒したものといえる。
こうした自主規制が許されてしまえば、今後自主規制が無制限に拡大していく危機的状況が生まれることであろう。

いったい、どういう話し合いの末に、こんな修正がまかり通ってしまったのか?