NHK紅白出場33回を誇る大物演歌歌手も昨年の事務所社長解任騒動以降、急失速。まさに転落の芸能生活を余儀なくされている。
その象徴的なシーンが、とあるデパートの屋上で繰り広げられたのだ。


東京・池袋にある東武百貨店。6月23日昼、8階にある屋上「スカイデッキ広場」の特設ミニステージ前にはパイプイスが100席並べられ、「主役」の登場を待っていた。
背中に大きく「5884」とプリントされたTシャツを着たスタッフが忙しく歩き回り、

「CD1枚1200円です。購入するとサインと握手会に参加できます」

と声を張り上げて「勧誘」する。
「5884」は察するに「こばやし」をモジったものだろう──。


この日は、あの小林幸子(59)のデビュー50周年新曲「蛍前線」発売を記念したミニライブ&サイン握手会。
なんとその会場が、ここデパートの屋上だったのである。

デパートの屋上と聞いて思い浮かべるのは、売り出し中のタレントや芸人の営業、あるいは子供向けの戦隊ショーなど。
およそ小林ほどの大物とはなかなか結び付かない。

偶然、百貨店に買い物に訪れ、見学していた中年女性が言う。

「CDを買った人だけがイス席の優先エリアに入ることができ、サイン&握手会参加券をもらっていました。
でも開演5分前になると、スタッフが『前のほうでご覧ください』と、CDを買う気のない、屋上でくつろいでいる人たちに声をかけ、ゾロゾロと立ち見客ができた。
何しろイス席はスカスカで寂しい感じでしたから、ヤジ馬が欲しかったんでしょう。
数えてみたところ、CD購入者、つまり優先エリアの客はわずか五十数人でしたね」

1200円で間近で観覧、握手までできるというのに、約半分しか埋まらないのだ。

午後1時、開演。ピンクのドレスを着た小林がステージに登場し、歌い始める。

「2曲目は『おもいで酒』でしたが『では聴いてください。200万枚のヒットになりました』とみずからアナウンスしていました。
200万枚、とわざわざ強調するところが過去の栄光にすがっているというか、何だか今の苦しさを物語っているようでねぇ‥‥」(前出・中年女性客)

3曲目は新曲のカップリング曲である「おかあさんへ」。そして最後に50周年記念曲の「蛍前線」を歌い上げた。

歌い終わった小林は、貴重なイス席の客に向かってこう話しかけたという。

「私がデビューした時の『ウソツキ鴎』、ご存じの方は?」

優先エリアから手があがったのはわずか10人ほどだった‥‥。

こうして20分間の歌とトークが終了。ステージ前にテーブルを置いてのサイン&握手会へと突入したのである。
この日は午後4時にも2回目のステージが行われた。

それにしても、デパートの屋上にデビュー50周年の小林幸子って‥‥。
居合わせた別の客いわく、

「東武百貨店のスタッフに聞くと、『ここでイベントをやるのは9割方、無名のというか‥‥名前がよくわからないようなアイドル、ご当地アイドルなどがメインですね』と言っていましたけどね」

大物紅白歌手が駆け出しアイドルと肩を並べるとは‥‥。騒動後わずか1年で隔世の感というか、何というか。

このステージに先駆け、彼女は6月4日にも都内のホテルで「蛍前線」発売記念懇親会を開き、芸能関係者らを多数招いた。出席したテレビ関係者が嘆息する。

「その時贈られた花輪はたった2組だけ。業界関係者は誰も出していなかった。
(社長解任という)みずから招いた騒動によって半ば芸能界から干され、レコード会社との契約も切れて自主レーベルを立ち上げた。四面楚歌、孤立無援の状態を証明していましたね」

かつての栄華を懐かしんで、「おもいで酒」を痛飲、なんてことのないよう‥‥。