富士山付近で不気味な地震が頻発している。
 
28日から29日にかけて山梨県東部・富士五湖でマグニチュード(M)5・5などの地震が立て続けに起こり、有感地震はこの2日間だけで十数回に達した。
この現象で懸念されるのが、富士山への影響だ。現在のところ異変の兆候はみられていないが、富士山はれっきとした活火山。
専門家はM9・0だった東日本大震災以降、活発化するプレートの動きに注目し、噴火の引き金になる「マグマ溜まり」への影響を危惧している。
 山梨県東部・富士五湖を震源地とするM5・0(震度4)の地震が発生し、4分後にはM5・5(同5弱)が襲った。さらに29日午後4時46分にも余震とみられるM4・7(同4)など断続的に大きな揺れが起きたことから、震源地のほど近くにある富士山の火山活動に一挙に注目が集まった。
 これを受け、気象庁は「富士山の低周波地震や周辺の傾斜計などの地殻変動データに異常はない」とし、火山活動との関連を否定。
懸念される噴火の予兆、前兆は退けられた格好だ。
 だが、専門家は楽観できる状況ではないことを示唆する。
 「『富士山は休火山だから大丈夫』と誤解している人もいるようですが、そもそも現在の火山学で休火山という概念はありません。過去1万年以内に噴火していれば立派な活火山。今でこそ平穏な姿を見せていますが、いつ“本来の顔”をみせるのかはわかりません」 こう説明するのは、千葉大大学院理学研究科の津久井雅志・准教授。
伊豆諸島の火山活動を研究する同氏は、「3・11」の発生以降、地震が頻発する日本列島の状況に警戒感を強めている。
 「あの地震以降、日本列島は『地震の活動期』に入ったと言われています。その状況は富士山の火山活動が活発だった平安期とそっくり。活発化するプレートの動きが富士山の火山活動に影響を与える可能性は否定できない」(津久井氏)
 同氏によると、震災直後にも緊張が高まったことがあったという。昨年3月15日に静岡県東部、深さ14キロの地点を震源として発生したM6・4(震度6強)の地震だ。 「震源地が、噴火を引き起こす地中のマグマ溜まりの存在が疑われる場所に極めて近かった。噴火が起きても、おかしくない状況でした」(同) 「マグマ溜まり」とはその名の通り、地殻内でマグマが蓄積された部分のことだ。炭酸ガスの発泡によって上昇し、地表近くに達して滞留したマグマが吹き上がる現象が「噴火」だ。 炭酸飲料を振って栓を抜くと一気に中身が吹き出すのと原理は同じで、「炭酸ガスの急激な発泡が噴火を招きますが、3月15日の地震ではその条件が整わなかった。ある意味で幸運だった」(同)。
富士山が最後に噴火したのは305年前。
1707年に起きたこの噴火は、宝永大噴火と呼ばれた。その49日前には、駿河湾から四国沖までを震源域としたM8・6の宝永地震が起きている。
 
「M8~9の大地震の後には火山活動が活発化する例は数多くあります。昨年2月、M8・8のチリ地震が起きたときは、9000年間活動のなかったチリ火山が噴火しました」(同) 今年1月には、宮崎県と鹿児島県の県境に立つ霧島連山の新燃岳が約300年ぶりに噴火しており、津久井氏は「地震から日がたったからといって安心できません」と危機感を募らせている。
 内閣府では、こうした状況を踏まえて「富士山火山防災協議会」を設置。16日間にわたって噴煙を上げた宝永大噴火をモデルに各地の被害状況をシミュレーションしている。
 「溶岩流は、富士五湖を飲み込み、山梨県の富士吉田市や都留市にまで到達する可能性があります。季節や風向きによって被害状況は大きく変わりますが、最悪の場合には、火山灰は千葉県・房総半島にまで到達。東京の八王子市や町田市の一部では灰が10センチも降り積もり、都内全域では2~10センチの降灰被害が出る。
これにより、電子機器の故障が起き、交通インフラも寸断。健康被害も相次ぐなど都市機能はまひするでしょう」(気象庁関係者)
 内閣府では、噴火による一連の被害額を2・5兆円と算出している。

 実際に起これば日本にとって壊滅的な打撃になる「富士山の噴火」。杞憂に終わることを祈るばかりだ。